平成30年7月22日に東京医科歯科大学4階演習室において第12回
東京医科歯科大学インプラント同門会総会が開催されました。
13時05分 総会
開会の辞に続き,岡田先生より,現在の役員の任期が満了することから会員の先生方に対し次期役員についての自薦他薦の依頼がありました。また,現在,1月と7月の2回行っている総会を来年より1月のみとし,夏については他の形態での催しを現在検討している旨の報告がありました。
13時30分
和同会歯科技工センター 澤村昌哉先生 ご講演
まず,澤村先生から,医科歯科大学における即時負荷インプラントの歴史と臨床成績についてご講演いただきました。
約4半世紀の歴史からみえてきた知見として,インプラントに与える咬合については現状ではエビデンスに基づいた方法は存在せず上部構造の咬合付与に関しては生体との適合性に細心の注意を払うべきであること,IOD等の補綴においては保険設計タイプの義歯を自費タイプの義歯へと変更していくことが有用であること,補綴の精度と強度には特に注意を払うことが良好な長期予後には重要であること等を実際の症例を供覧しながら分かりやすくご説明いただきました。中でも口腔内での最終調整時の徹底的な研磨の有無がチッピング等の補綴物の破損に大きく影響があるとの指摘は私たちへの大きな戒めとなりました。最後に参加者への特典として特別価格での補綴技工のおまけのご案内もいただきました。
14時05分
鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学講座 小久保裕司教授 ご講演
「インプラント治療にデジタル技術を有効に活用する」
続いて,鶴見大学の小久保教授より,鶴見大学での現在のデジタル機器を用いたインプラント治療の実際と今後の展望について症例を交えながら詳細なご講演をいただきました。
初めに,サージカルガイド及び近年開業医でも導入が進んできている口腔内スキャナー(IOS)を使用したインプラント治療におけるデジタルワークフローについてお話しいただきました。サージカルガイドの使用により,埋入精度向上と上部構造に対する適正位置への埋入が可能になること,及びその際にサージカルガイドの精度に及ぼす要因と精度低下の回避方法について実際の臨床症例を示しながら詳細にご説明いただきました。術後の疼痛もフリーハンドの埋入に比べサージカルガイドの使用では優位に小さくなるとのご教示があり,サージカルガイドの使用が疼痛を減少させるとの知見は開業医の臨床においては精度以上にサージカルガイドを使用する大きなメリットになると感じられました。続いて近年,鶴見大学で導入が始まったロボット手術によるインプラント治療についてこれを実際に行っている手術室の様子を供覧しながらご説明いただきました。この技術の完成によりダビンチ手術同様,歯科でも大学に居ながら離島での手術が行える日がそう遠くないと感じられる驚くべきお話でした。
15時20分
明海大学歯学部歯周病学分野 林 丈一郎教授 ご講演
「インプラント周囲のソフトティッシュマネジメントを考える」
林教授は岡田会長がぺリオの教室に在籍していたときに指導を受けた先輩であり恩師にあたる先生です。ご講演の冒頭では入局間もない頃の活気盛んな若き岡田先生に驚かされた昔話もご披露いただきました。本題ではまず初めに,インプラント周囲炎の発症率についてお話がありました。埋入後9年後のインプラント周囲炎罹患率はインプラント体単位で25%,患者単位で45%とのスウェーデンの報告があり,実にインプラント体4本に1本,患者の約半数に発症がみられているとことでした。この数字には会場にいた多くの先生が驚かれたようです。周囲炎と関連する要素としては①30%以上のプラーク付着率,②30%以上のBOP陽性率,③角化粘膜の幅が2mm以下であることの3つが特に関連が強く,林先生のロジスティック回帰分析を用いた研究によれば,3mm以上の骨吸収に与える因子として,粘膜の可動性の存在が強く示唆されたとのことでした。以上から,インプラント周囲炎の予防には如何に角化歯肉を存在(温存・獲得)させ,埋入部位の粘膜を動かなく出来るかが重要であるとの知見を多くの研究を基にご教示いただきました。そして次に実際の臨床において粘膜を動かなくするためには4mm以上の角化歯肉の存在が必要であると考えられるという具体的なメルクマールを根拠と共にご説明いただきました。さらに角化歯肉を獲得するための複数の具体的手技について臨床スライドにより分かりやすくご教授くださいました。中でも半月上歯肉弁歯冠側移動術は,私たちが明日から診療室で行える手技としてとても有効なものでした。
16時50分
暑さのおかげで乾杯の待ち遠しくなった夕方より,ご講演いただいた先生方もご参加いただき,金子先生の発声によりアルメイダにて懇親会を行いました。
今回は他の学会総会等々(WDAIも)と日程が重ったことから,参加調整が困難となった先生も多かったとのことで大変申し訳ありませんでした。次回総会において今回お会いできなかった先生方とも是非また旧交を温めたいと思っております。来年1月にまた皆さんでお会いできることを楽しみにしております。