2016年7月24日(日)13時より歯学部附属病院4階特別講堂にて同門会第8回総会が開催されました。今回は,現役医員の秋野徳雄先生,本学歯周病学分野の秋月達也先生,並びに本学高齢者歯科学分野の水口俊介教授の3名にご講演を行っていただきました。
13時 総会
会長・岡田常司先生から同門会の現状等のご報告があり,続いて金子先生から会計報告が行われました。各議題は全会一致で承認されました。その後,今年ご開業される中村先生(8月)・鶴見先生(10月)のお二人に開業に際しての決意・抱負をお話しいただきました。予防を重視し,歯を残す治療をモットーに患者さんと接していきたいという点で二人の考えは共通しておりました。これは外来でのインプラントによる欠損補綴を経験した末に至った境地だと思いますので,地域に理念を浸透させられるよう是非頑張っていただきたいと思います。
13時20分 秋野徳雄先生 ご講演
「外側性骨造成を目的とした立体型骨補填材の開発」
秋野先生からは,臨床的に難しくまた課題も多い外側性の骨造成と,これに関する現在研究の進んでいる人工骨についてご講演いただきました。骨造成では自家骨の採取が量的に不十分となることが多いことから人工骨の研究は現在も盛んに行われています。近年では,ジャガイモやサトウキビにも含まれるポリ乳酸のうちの,ポリDL乳酸と多孔性HAの組み合わせが海綿骨と同程度の圧縮強度があり,骨伝導の促進力の高さからも有効な知見が得られているとのことでした。また人工骨の使用に際しては体内の全蛋白質の3割・28種類あるコラーゲンを添加すること,組織に傷を付け細胞浸潤を図ることが有用である等の研究から得られた知見を豊富なデータ・スライドを示してお話しいただきました。
14時00分 秋月達也先生 ご講演
「どうしてインプラントと歯周病は仲が悪いのか!」
秋月先生からは歯周病専門医からみたインプラントの有用性と問題点等についてご講演いただきました。レントゲンでは診断が難しくあまり知られていないセメント質剥離の治療,インプラントを守る咬合が天然歯の過剰咬合・垂直破折と因果関係を有するとの指摘,歯周病罹患患者のインプラント喪失割合は健常者の9倍と優位に高いことなどにつき詳細なデータと実際のケースを示しながらお話しいただきました。さらに,インプラント治療を行なう先生に参考としてもらいたい指針として「歯周病治療の指針2015」「歯周病患者におけるインプラント治療の指針2008」(いずれも日本歯周病学会HPからダウンロード可)のご紹介もいただきました。
15時15分 水口俊介先生 ご講演
「高齢者に対する義歯治療とインプラントオーバーデンチャー」
最後は,インプラント治療部創設時からインプラントに関わっておられる本学高齢者歯科学講座の水口教授にご講演いただきました。超高齢社会における健康寿命の延伸に関しては,口腔機能の維持と筋力維持が有効であり歯科の役割がとても大きくなってきていること,これに伴い近年注目されているオーラルフレイルについてまずお話しいただきました。そして,最近のIOD(インプラントオーバーデンチャー)の考え方についても実例を交えてご説明いただきました。40代後半の先生が現役の頃は,オーバーデンチャーと言えば,インプラント4本に対してドルダーバーまたはマグネットによる維持が通例であったと思いますが,近年では下顎では2本のインプラントでも4本と大きな差異はなく,シングルスタンドインプラントも義歯の維持には有効と考えられているようです。その後,IODの義歯もあくまで総義歯が基本であることから総義歯についての講義も行っていただきました。義歯の吸着に重要な「顎舌骨筋群」「後顎舌骨筋窩」「サブリンガル」等の解剖学や,コンパウンドの使い方等,学生時代以降不鮮明であった記憶が覚醒した先生も多かったのではないかと思います。
16時50分 グリル・セインツにて懇親会
長尾先生のご挨拶をスタートに、16時50分より懇親会をセインツにて開催いたしました。今回はご講演いただいた水口先生もご参会いただき,学生時代に学生実習のライターとしてお世話になった話や,インプラント治療部創設の頃のお話,さらには最近はまっているカジキマグロの釣り方まで,四半世紀に亘る様々な思いで話等に花が咲きました。会も今回で8回目となり,同門会を通じて初めて知り合った先生方もかなり顔馴染みとなり全体としての一体感が感じられた会となりました。
次回総会は慶応大学の河奈裕正先生,横浜総合病院の今村栄作先生のご講演を予定しております。今回お会いできなかった会員の先生方も是非来年1月15日(日)にまたお会いしましょう。